オフライン小売の終焉の始まり?・・・京东到家

今回は中国のスーパーマーケットを一網打尽にしつつある「京东到家」というサービスのお話です。今後あっという間に中国のスーパーの店舗数は今の半分になってしまうかもしれません。

まず中国でこの数年一気に成長したサービスの一つとして「外食デリバリーサービス」があげられるます。上海の弊社オフィスが入居しているビルで起業した外食デリバリーサービス業界最大手の「饿了吗」を筆頭に「百度外卖」など複数のプレイヤーが乱立し、会社のランチや午後のコーヒー、更にはちょっとしたデザートまでも、弊社社員はほとんど宅配で済ませています。
デリバリーのモデルはかなり強引で、とにかく安い配達員をアプリ・サービス側が大量に管理します。ロケーションを管理された配達員がタクシーのように配車待ちをしており、注文が入り、デリバリーする商品が準備できると配達員は指示に従って届けるといういたってシンプルな仕組みです。
「京东到家」は同じモデルのスーパーマーケット版です。近くにあるスーパーがアプリ上に一覧で並び、自分の買いたい商品を検索するとそれぞれの店舗での販売商品と価格一覧からサクサクと買い物ができます。商品が購入されると、配達員がお店でのピッキングまたはピッキングされたものを受け取てっ1時間以内(実際にはまだ2時間以上かかることもある)を目標にお届けする、というサービスです。
「京东到家」の配送一回につき限界費用は配達員に支払う固定の3元だけなので、大体一店舗30元ぐらい買えば何らかの配送費優遇があり、あちこちのスーパーで特売品をつまみ買いしてもユーザーの支払い額にはあまり響きません。
現在このサービスは通称新达达と呼ばれる会社が運営しています。2014年に創業したMITの物流工学を卒業した蒯佳祺が作ったデリバリーサービスなどを引き受ける即時物流専業のスタートアップである「達達」と中国でアリババにつぐECのプラットフォーマーであるJD傘下にあった「京东到家」が今年の8月に統合して出来た会社で、更に10月にはWalmartから5000万ドルの投資が発表され今に至ります。


現在このWalmartからの資金など、大量に流れ込んでいる投資マネーを活用して、このアプリに入会すると50元(800円)相当のクーポン券が配布されるなど強烈な新規入会キャンペーンを展開しており、一気に入会数が増加しています。但し、このサービスは原価率が低く、デリバリー事業が世界各地で成立している外食とは全く違う話だと思います。スーパーは何万もの商品を並べ、特売品は赤字覚悟でお客様を店舗に引き込み、ついでに利益率の高いものも合わせて買って頂きながら、ギリギリの粗利を確保するというビジネスです。外食の半分から下手をすると4分の1ぐらいの粗利でビジネスに取り組んでおり、個別店舗からの配送は追加物流コストをまかなうハードルが非常に高く、世界中で広範に成功したモデルがない領域のビジネスです。そのため収益化に向けてのハードルは極めて高いと思います。実際にグループ全体として依然赤字体質のJD内部のメンバーに聞いても、この事業は統合も必ずしも上手く行っているとはいえず、社内的には微妙なプロジェクトと位置づけられているようです。
とはいえ、仮に世界に先駆けてビックデータと安価な配達員の供給に基づく物流コストの最適化と顧客をスマホのプラットフォーム上に載せたことで得られる広告費などの追加収入でこのビジネスを彼らが成功させた場合、AmazonFreshとは違う方角から世界をリードする小売業態となる可能性を秘めています。当然このグループが自社でスーパーを持った方がいいということになるでしょうからAmazonFreshとも近づいていくと思いますし、スーパーマーケットが長年成立してきた特売品で消費者を惹きつけるというようなビジネスモデルは崩壊すると思います。
日本では現時点では配達員の費用を考えると成立しない事業モデルかも知れませんが、ウォルマートのCEOが投資発表時のインタビューで語っているとおり、デジタルが先に進化した中国の小売はこれから都市がデザインされていく大多数の世界の未来の趨勢だと思います。つまり、例え生鮮食品であっても、スマホを起点に業態がデザインされるべきだということです。20世紀後半には車による大量消費社会が訪れて郊外型ショッピングモールが世界中の先進国で広がりましたが、同じレベルの変化が中国では世界に先駆けてこれから起こっていくと思います。つまり、徒歩圏にスーパーマーケットが乱立する必要性はどんどん下がっていき、今食べたい超即時ニーズとエンタメ性の高いテーマパーク以外の生鮮小売はオフラインにお店を構える意味がなくなり、マーケットから退場していくことになるのではないでしょうか。

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