DIDI 滴滴打車が生み出したエコシステム

第三回の今回は、自分の本業に近い中国デジタル市場の話をしたいと思います。

私は2009年から上海にも家を借り始めたのですが、その時点で生活する上で上海が東京より便利だったことは何一つありませんでした。現在、間違いなく上海のほうが東京より暮らしやすいことが2つあります。一つは移動で、もう一つは決済です。どちらも新規参入したベンチャー企業同士の戦いが、消費者に利便性をもたらしました。「移動」を例にとって、ご紹介したいと思います。

中国の移動は、現在アプリによって急速に進化しています。アプリを開いて移動先を入力すれば、タクシー、自家用車(いわゆるPeople Uberの世界)、ハイヤーのような専用車、通勤時などに役立つ相乗りサービス、のいずれかの移動手段を値段を比較しながら選べます。これ以外にいわゆる代行サービス、レンタカー、それに各自動車メーカーの車の試乗も、実際に乗っている人のを借りる形で、同じアプリ上で選択して、自分の今いる場所まで迎えに来てくれます。先月社員旅行でベトナムに隣接する広西自治区に行きましたが、自治区内のマクドナルドやスタバも一切無いようなど田舎の街でも十分利用可能でした。価格はビックデータを下に市場の需要と供給で決まり、事前に評価の低い運転手にNGを出して他を選んだり、事後に無駄に廻り道をしたとクレームすれば価格を再交渉することも可能です。決済にはWechat PayやAlipayが使われ、毎回自動引き落としです。一度使ったら分かりますが、中国での移動の不安が一気に解消される魔法の杖です。

このアプリサービスはまずは国内勢の戦い、次にUBERとの大競争を経て、現在DIDI(滴滴打车)が支配的な位置を築いています。昨年は14億回以上利用されたとのことで、庶民の足として定着したと言って良いと思います。このDIDIは、直近のUber中国を吸収合併した際の評価額が350億米ドル(3兆5000億円)で、テンセント、ソフトバンク、APPLEやUBERなどに投資されている他、自ら東南アジアのGrab、インドのOla、アメリカのLyftといった同業他社に投資していて、DIDIのアカウントはこれらのAPPでも使えるようになりつつあります。先日ボストンに出張した際に、実際にLyftをDIDIのAPPから使ってみましたが、中国語でのサポートが充実しており、決済もWechat Payで自動決済出来るため、非常に便利でした。今アメリカを旅行するなら日本人より中国人の方が移動の不安はない状況です。今後航空会社がスターアライアンスなどの3大グローバルアライアンスによって世界中のニーズを囲い込んでいるように、移動についても世界のAPPによるネットワーク化が進む可能性もあると思います。

さて、僕なりの意味合い出しなのですが、日本はインバウンド対策として、DIDIの完璧コピーメガベンチャーを東京オリンピックに向けて創りだしてはどうでしょう?このマーケットは地方自治体の都市計画や交通行政との調整、既存業者との共存施策などが成功の鍵の一つです。ビックデータが生きるAPPサービスではありますが、規制側が推進してマーケットメカニズムをサポートするとベンチャーとしての成功確率が大きく上がる分野です。DIDIのメリットは、移動の自由を作り出すだけでなく、車を持つあらゆる人がサービスの提供者になれることです。外国人にとって日本旅行の大きな不安は移動です。そのせいで外人には訪れるのが難しい場所もたくさんあると思います。また、個人の車に乗ってもらうことは個々の生活水準の高さ、おもてなしを伝える絶好の機会になると思います。日本人みんなで100語でいいから、語学を一つ勉強して、車で海外からのビジターをもてなそう!日本の素晴らしさをみんなが伝えられるよ!というようなスローガンでベンチャーを作って国が応援したら、タクシー会社は潰れるかもしれませんが、結果として日本人にとっても国内、国外の移動が今よりずっと楽になる可能性があると思いますし、リーダーよりも一人一人の市井の人々が強みである日本っぽいサービスが生まれる気がします。過疎地域でフルタイムのタクシー業者は成立しなくても、車を運転出来る近くにいる人がパートタイムで支えてあげてお小遣いをもらうというモデルなら、成立する市場も多くあるのではないでしょうか。