国家の安全保障戦略とは・・・2つの大事な指標

2016年9月27日

宋文洲メールマガジン連載

第2回 国家の安全保障戦略とは・・・2つの大事な指標

第2回はYo-renとは一見関係のないマクロ経済の話です。とはいえ、今回の指標は、ついつい自社や自分のことばかりが気になって、市場や競合のなかで相対的に自分達がどういう立ち位置にいるかを見落としがちな日々を反省したくなるような話でもあります。

以下宋文洲メールマガジンより転載)

今回からは、日々の事業の中での気づきをお伝えするはずだったのですが、2つ気になる中国の経済指標が先週発表されたので、その話をしたいと思います。

一つ目は、先月8月で、中国の原油輸入先のトップがサウジアラビアからロシアに変わったというニュースです。これは過去数年の傾向を踏襲した昨年比1.5倍となるロシアからの原油輸入量の急増が原因となっています。2015年までの輸入先は中東が輸入全体の過半数を占めていましたが、ウクライナ問題で孤立したロシアと中国の急速な接近に伴い、原油輸入先としてもロシアが一気に台頭したわけです。背景には、アメリカの中東政策の変化があることは確実だと思います。アメリカでシェールオイル採掘の技術が発展して原油生産量が急増しており、2011年をピークに原油輸入絶対額および依存率が減少してきているという見込みを重要な要因として、アメリカにとって中東の平和を維持することの正当性が失われつつあります。これを反映して、日々ニュースとなっているシリア問題だけでなく、サウジアラビアとイランの国交断絶など多様な動きが起こっており、中東の政治リスクは大きく高まっています。中国は1992年までは原油純輸出国でしたが、工業生産の増大と消費経済の発展に伴い輸入国に転じ、2015年時点では世界最大の原油輸入国となっています。これまでアメリカが中東の警察をしてくれたことに一番恩恵を受けていたのは日本でしたが、気がつけば中国がその対象となったわけです。アメリカがその役割を果たさなくなり、ロシアは逆にウクライナ問題などでヨーロッパ偏重を回避したい中で、中国は一気に原油調達先ポートフォリオを分散させているということだと思います。日本はというと、過去3年の数値を見る限り直近のロシアからの輸入量に大きな変化はありません。

もう一つは、海外直接投資です。これは日経などでも言及がありましたが、先週22日の発表によると2015年に中国の海外直接投資は日本を超えて世界第二位となり、中国への他国からの海外投資額を超えて投資超過の国に転じました。別の回で中国への海外からの投資については議論したいと思いますが、こちらは日本からを除いて実は引き続き高水準で安定していて、対外投資額が前年比18.3%純増したことによる現象です。詳細を見ていくとロシア向け投資が昨年比367%増加、欧州への投資のなんと41.6%を占めています。日本はというと昨年のロシアへの投資は欧州への投資総額のわずか1.3%です。

北方領土問題の進展が話題になる背景同様、ロシアの対外的な立場が脆弱であることを踏まえたダイナミズムのなかでの動きだと思いますが、日本のやり方は政経バラバラという気がします。領土問題だけ議論しても、繋がりの薄い国、譲歩するメリットが薄い国に譲歩する理屈がわかりませんし、そもそも領土問題以上に、生活のためのエネルギーリスクの分散などのほうが安全保障上は重要ではないかと思います。日本では経済協力を梃子に領土問題を解決云々という議論があるようですが、日本の相対的なロシア経済への貢献度合い、本気度合いを見ると、地政学上の大きな変更をもたらすインセンティブはロシアには一切ないと思います。